【小説】「UFOと親父③」
この葬儀にマスコミは群がり、面白がって興味本位の報道を繰り返した。
「会社人間が退職を期に自殺!! 生き甲斐を失った男の哀れな末路!!!」
などと無責任なテロップが昼のワイドショーでひっきりなしに流れるようになり、ただでさえ精神的に参っていた母は、ついに寝込んでしまった。
まったくマスコミという奴等は人間の屑である。ハイエナの如くネタに群がり、視聴率を稼ぐためならば人の尊厳を踏みにじることなど屁とも思っていない。ブラウン管の中、レポーターやコメンテーターが行方不明となっている親父に同情するそぶりで「生きていて欲しい」だの「奥さんが可哀想だ」だのと、「常識的な意見」と言うやつをペラペラと述べている。だが、奴等の魂胆は明らかだ。TVに噛り付いているヒマな視聴者共を喜ばせ、少しでも視聴率を稼ぎたいだけなのだ。親父や僕たち家族に対する哀れみの気持ちなど、本当はこれっぽちも持ち合わせていない。それが証拠に、そっとしておいてくれればいいものを「取材」と称して毎日のように家に押しかけくる。
近所の住民も悩みの種だった。母によれば、近所のヒマを持て余している主婦達が「大丈夫?」とか「何か力になれることがあれば言ってください」とか言って、何かと理由をつけては家にあがろうとするらしい。まったくもって大きなお世話、「やさしさ」の押し売りである。どうやらTVカメラが自分達が住んでいる街に来ていることが面白くて仕方ないらしい。
ある日曜の昼間、何気なくテレビをつけたら、とある中年の女がTVレポーターに意見を求められて「あんなにいい人がこんな目に遭うなんて…」と涙を流している姿を観た。僕はその女の顔を覚えていた。いつも内のゴミの分別がいい加減だと言って文句ばかりつけてくる町内会の顔役だ。親父は彼女と仲が悪かった。親父が唯一していた家事がゴミ出しだったのだが、ある時親父は収集日を間違えてプラスチック包装ゴミ収集の日に可燃ゴミを出してしまったのだ。これが原因で親父と彼女は激しい口論となり、それ以来口も聞いていないはずだった。
これだから人間は信用できない。
僕は母が心配になり、当分の間妻と共に実家で過ごすことにした。
そのうち世間もこの話題に飽きることだろう。1週間もすれば新たな猟奇殺人事件でも起きて、暇な奴等の興味はそっちに移るはずだ。それまでの辛抱である。
今はだまって台風が通り過ぎるのを待つしかない。
ところが、僕の予想に反して、事態は思わぬ方向に進み、マスコミの報道は加熱の一途を辿ることになった。
何故かといえば、親父が生きていたからである。
葬式から1ヶ月が経ったある日、親父はひょっこりと家に帰ってきた。僕も母も妹も「今までどこで何してたんだ!?」と親父を詰問した。新聞記者やTVレポーターたちも、争ってこの疑問を親父にぶつけた。
そして、ついに記者会見が開かれることになった。
その記者会見の場で、親父はこう言ったのである。
「4ヶ月前、私はバードウォッチングに出掛けました。そこでUFOに攫われたのです。今日まで私は、宇宙人ととも生活していました。どうも心配をおかけしました。世間をお騒がせしたことを、心よりお詫び申し上げます」
この衝撃の発言の後、親父は「時の人」となった。
↓ブログ人気投票にも協力くださーい。クリックお願いします♪
http://blog.with2.net/link.php?575677
| 固定リンク
「小説」カテゴリの記事
- 【小説】「UFOと親父⑮」(2008.05.31)
- 【小説】「UFOと親父⑭」(2008.05.22)
- 【小説】「UFOと親父⑬」(2008.05.22)
- 【小説】「UFOと親父⑫」(2008.05.20)
- 【小説】「UFOと親父⑪」(2008.05.16)
トラックバック
この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/141249/20633915
この記事へのトラックバック一覧です: 【小説】「UFOと親父③」:
» 「ROOKIES」4月19日(土)視聴率 [「ROOKIES」性格・相性・恋愛徹底分析ガイド]
「ROOKIES」4月19日(土)の視聴率は!? [続きを読む]
受信: 2008年4月30日 (水) 14時18分
» 低空飛行をするUFO動画 [You Tube お勧め動画]
地上に近い低空をゆっくり飛んでいくUFO。 UFOの船体がしっかり見えています。度迫力の動画です [続きを読む]
受信: 2008年4月30日 (水) 16時19分
コメント
ふふふ
なんかにやけてしまった
投稿 もこたん | 2008年4月29日 (火) 22時16分
そいつはとても嬉しいっすw
ありがとうございますー♪
投稿 まおうげん | 2008年4月30日 (水) 11時17分