【小説】「UFOと親父⑦」
万が一、あの親父がウソをついているのだとしても、もっと相応しいウソがあるだろう。「UFO」などという、胡散臭くて東スポちっくなものは、親父にまったく似合わない。僕の知る限り、親父はそのようないかがしいものに興味を示す男ではなかった。TVをつければNHKしか観ない。音楽はクラシックしか聴かない。およそ「娯楽」というものに縁がない、糞真面目で四角四面の会社人間―それが僕の親父なのである。
あの頑固一徹な親父が「UFOに攫われた」と一貫して主張しているのだ。もしかしたら、本当に宇宙人と遭遇したのかもしれない。あり得ない話だが、考えれば考えるほど、そう思えてきた。
そんなある日の日曜日、僕の携帯に見知らぬ番号の着信履歴が残されていた。留守番電話センターにメッセージが保管されていたため、僕はそれを再生した。
「方丈ユタカさんですね。貴方のお父さんについて話したいことがあります。本日18:30に、○×駅前にある【あたたか】という喫茶店でお待ちしております―」
メッセージの声が女のものだった。
僕は「まさか」と思った。同時に「ありえない話ではない」とも考えた。今や親父は日本、いや世界でも有数の有名人となってしまった。ちょっと買物にと街をぶらついただけで大騒ぎとなり、女子中学生までもが我先にと親父にサインをねだるような世の中である。
あの親父に限ってはそういうことはないと思っていたものの、やはり親父も男である。この機に乗じて不倫の華の一輪でも咲かせてやろうという下心が起こる可能性は十分にありえる。
ともかく、我が家が修羅場と化すことを避けるためにも、僕はこの声の主に会ってみることにした。僕は妻にメッセージを聞かせて状況を説明し、何年も着ていなかったよそ行きのシャツとジーンズを着ると、家を出た。
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