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2010年7月15日 (木)

Androidは電子書籍の夢を見るか?

iPadとiPhone4の発売で、電子書籍に注目が集まっている。
 僕はITと出版の間を行ったり来たりしているゴロツキだから、この話題には特に敏感になる。

 実のところ僕は、電子出版はビジネスにはなり得ないと思っている。多くの出版社が電子出版に投資しているようだが、恐らくは失敗に終わるだろう。

 多くの出版社が書籍をデータ化し、暗号化して専用のビューアでしか閲覧できないシステムを構築して利ざやを得ようとしている。この試みがビジネスとして成功する可能性は、60歳からスポーツを始めた老人が、オリンピックの陸上競技で金メダルをとる確率よりも低い。

 数年後に出版社は電子書籍サービス全体をクラウド化するだろう。専用のサーバを構築し、そこに膨大な書籍データを詰め込んで、ログインして閲覧するタイプのビジネスモデルに行き着くはずだ。料金体系は定額制で読み放題という形態をとる。他にも多くのアプローチが考えられるが、その全てがこの方法に淘汰されるだろう。

 なんのことはない。これはポルノ業界がウェブビジネスで最後に行き着いた結論である。巨大な産業の行く末は、零細ビジネスの動きを見ていれば一目瞭然だ。天体が原子と酷似した振る舞いをするように、マクロな世界の出来事の全ては、ミクロの世界で既に起こっている。

 電子書籍ビジネスの致命的な問題は、膨大な無料コンテンツが存在しているウェブとどう競争していくかということに尽きる。情報技術はまだ等比級数的な速度で進化し続ける。数年後にはブラウザそのものの性能が現在とは桁違いなものになっているだろう。クラウドコンピューティングはブラウザを劇的に進化させる。クラウドの本質とは、ブラウザを万能のツールに仕立て上げる試みに他ならないからだ。

 そうなったとき、本質的に単なる画像ビューアでしかない電子書籍は、PCの最も基本的なアプリケーションであるブラウザとどう戦おうというのか?
 装丁を美しくすることで、レイアウトを美しくすることでウェブとの差異をつけようと出版社はまず考えるだろう。
 そしてそれは、あまりに安易な戦略だ。近い将来ブラウザはフォントとレイアウトの点において劇的に進化する。アーキテクチャの進化がほぼ飽和状態となって停滞状態にある今、技術者たちの多くが全ての情熱とエネルギーを「見た目」に注ごうとしている。膨大な金と労力が美しい画面を表示するブラウザを開発するために費やされる。そのコストは、出版業界全体の年間売り上げを遥かに上回るものだ。

 要するに電子書籍とは、泡沫の夢でしかない。
 それでも老人たちは電子書籍に未来を感じ、金を出し続けるのだろう。

 それは絶望的な暗黒の中で光を放っている、ただひとつの灯台だから。

 たとえその先に待つものが、大きな口を開けた怪物だったとしても、前に進む以外に道はないのだ。

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