【食日記】蟹チャーハン篇
ひさびさに食日記。
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これは旨い。
これまで俺は「炒飯」という食物になんの期待も寄せていなかった。
「総じて炒飯は不味い」というのが、個人的な見解だった。はっきり言って、旨い炒飯は少ない。どこの中華料理屋で食べてもねちゃねちゃのご飯で、合成調味料の味しかしないものが殆どだ。正直な所、自分の手で作る炒飯が一番旨く、これ以上のものをこれまで外で食べた事がなかった。それも決して炒飯を食べたいから作るわけではなく、あくまで炒飯は、他に献立が思いつかなかった時の苦肉の策であった。
が、ここの炒飯は旨かった。俺は別にこの店の回し者ではないが、是非お勧めしたい。ラッシュ時は行列ができており並ぶのがウザいが、一度は食べる価値がある。
炒飯は美味しく作るのが難しい。その理由は、ライスと炒飯では米の最適な条件が全く違うからだ。ライス用に作られた品種の米は風味を楽しむために特化して改良されているため、大粒でやわらかい。炒飯にあう米は、もっと小粒で固い品種なのだ。
また、炒飯を作るためには米を固めに炊かなくてはいけない。ライス用よりも水は少なめにして、早めに炊き上げる。こうしなくては米粒がやわらかくなり、炒飯には不適合な炊き上がりになってしまう。
普通、どこの中華料理屋でも炒飯の為にわざわざ米を炊いたりしない。炒飯をライスと同じ炊飯器の米で作っている。これでは絶対に炒飯を美味しく作る事はできない。炒飯をおいしく作る為には、炒飯に最適な米を、最適な水加減で、最適な固さに炊き上げなくてはいけないのである。その為にはどうしてもライス用と炒飯用に、ふたつの炊飯器が必要になる。だが、このような選択は通常の中華料理店ではコスト的に不可能だ。炒飯だけの為にここまでの手間と費用をかけていては店が潰れてしまう。
そこでこの店である。この店は「炒飯専門店」なのだ。この店のメニューには、ラーメンもなければライスもない。あくまで主役は炒飯の店なのである。このコンセプトによってのみ、炒飯に特化した米の扱いが可能になるのだ。
この店で炒飯を頼んだら、まずは炒飯のルックスに注目して欲しい。普通の中華料理屋で出される炒飯はドーム上の形をしている。だが、この店の炒飯はその形をしていない。深めの皿に雑然と盛られている。ご飯の粒が細かく、高い火力で極限まで水分を飛ばしているため、パラパラになってしまいドーム状にするのは不可能なのだ。実は、ドーム状の形をした炒飯は、見た目は美しいが総じて不味い。ドーム上の形をしているという事は、蓋をかぶせて圧力をかけているということだ。こんなことをしては米粒同士がくっついてしまい、炒飯には必要不可欠な「パラパラ感」が減衰してしまう。しかし、この雑然とした盛られ方こそが、旨い炒飯の証なのである。
これまで俺は「炒飯」という食物を軽視していたが、この店の炒飯を食べてみて考えを改めさせられた。そろそろラーメン道は底が見えてきたし、これからは炒飯道を極めてみようと思う。
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